お役立ちコラム

介護うつは、介護生活を進めるなかで発症するうつ病のことです。対処が遅れてしまうと、症状が深刻化してしまうケースもあります。

本記事では、介護うつの原因やなりやすい人の特徴などについて解説。介護できなくなった場合の対処法や補助制度も紹介します。うつ病の症状緩和策もぜひ参考にしてください。

介護うつとは

介護うつとは、介護をする人が発症するうつ病のことです。介護職に携わる人のほか、自宅で家族を介護する人も介護うつになるケースが見受けられます。

介護が続けられなくなるだけでなく、自身の健康まで害してしまう介護うつの症状は「誰もが介護は大変なのだから」と見過ごしてしまいがちです。まずは、介護うつの原因や症状について確認していきましょう。

介護うつの原因

介護うつの原因には、「精神的」「身体的」「経済的」それぞれの負担が挙げられます。

精神的負担は、周囲に相談する人がいないほど感じやすいものです。特に、1人で在宅介護をしていると、強い孤独感からうつ症状を引き起こす可能性があります。自分の時間を確保できず、ストレスが積み重なるケースもあるでしょう。

身体的負担の大きな介護は、過労にも繋がります。ほかに介護者がいない場合は、体が疲弊していても介護を続けなければいけません。結果的に精神的負担も大きくなり、負のループに拍車がかかってしまいます。

被介護者に金銭的な余裕がない場合には、介護者による経済的な負担が必要です。支出が増えれば生活にゆとりがなくなり、心身の不調を悪化させてしまうでしょう。

介護うつの症状・サイン

介護うつでは、以下のような症状が現れます。

  • 食欲不振
  • 倦怠感や疲労感
  • 睡眠障害
  • 思考障害

初期症状では、「何を食べてもおいしく感じられない」「寝つきが悪い」などのサインが見られます。

これらの症状が数週間継続する場合は、介護うつの可能性が高いと考えてよいでしょう。日々の生活に支障をきたす前に、早めに対処するよう心がけてください。

参考:健達ネット「介護うつとは?介護疲れの原因や対策を解説!」

介護うつになりやすい人の性格・環境

介護うつになやすい人には、責任感が強かったり、完璧主義だったりといった性格的特徴があります。

環境も、介護うつを引き起こす要因のひとつです。家庭内不和や経済的不安のある環境は、ストレスにつながります。休む間もない在宅介護に、身体的な負担を感じることもあるでしょう。ここでは、介護うつになりやすい人の性格や環境について解説します。

介護うつになりやすい性格

介護うつになりやすい人には、以下のような性格の特徴があります。

  • 責任感が強い
  • 几帳面で完璧主義
  • 人の頼みを断り切れない
  • 繊細で人の気持ちを敏感に感じ取る

責任感が強い人は、介護負担を1人で抱え込んでしまいがちです。几帳面で完璧主義であるほど、介護に対する理想やハードルを高く設定しまうこともあるでしょう。

人の頼みを断り切れない人は、要介護者の欲求をすべて受け入れ、ストレスを抱えやすい傾向にあります。さらに、人の気持ちを感じ取ることができるほど周囲に気を配りすぎ、精神的に疲弊してしまいがちです。

介護うつになりやすい環境

介護うつになりやすい環境には、主に以下の2つが挙げられます。

  • 経済的不安のある環境
  • 家庭内不和のある環境

前述したように、経済的不安は介護うつの原因となり得ます。利用できる介護サービスも限られ、身体的負担も大きくなるでしょう。

介護を続けるためには、身近な協力者が必要です。そのため、家庭不和のある環境であるほどストレスを抱え込みやすくなります。家族が介護に協力的でない場合は、介護うつを発症するリスクがより高くなるでしょう。

参考:健達ネット「介護うつとは?介護疲れの原因や対策を解説!」

【介護うつ診断】今のあなたの状態をチェック

介護うつが疑われる場合は、厚生労働省の「簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)」で自己チェックしてみるのもひとつの方法です。回答に応じた点数を計算することで、うつ病の重症度を判断できます。

質問内容は、睡眠・食欲・精神運動状態に関するものなどの全16項目です。合計点が6点を超える場合はうつ病の可能性があるため、医療機関への相談をおすすめします。

参考:厚生労働省「簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)」

介護うつの治療について

介護うつをほうっておくと、深刻な状況になる可能性があります。辛い症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

また、家族や身近な人に助けを求めることも大切です。介護負担を軽減する道筋が見つかるかもしれません。ここでは、休養や精神療法、投薬治療といった介護うつの具体的な治療法について解説していきます。

早めに医療機関を受診しよう

食欲がなかったり、眠れなかったりといった介護うつの症状がみられた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。受診先は、精神科や心療内科が一般的です。「自分は大丈夫」と思い込まず、医師による適切な診断を受けてください。そのうえで、具体的な治療法を検討していきます。

無理をして介護を続けていると、要介護者と共倒れになる可能性もあります。心身に不安を感じる場合は、早めに他者に相談しましょう。

介護うつの具体的な治療法

介護うつの具体的な治療法には、「休養」「精神療法」「投薬治療」が挙げられます。治療をスムーズに進めるために、あらかじめそれぞれの特徴を理解しておくのがおすすめです。

自身の症状や環境をふまえつつ、自分に合った治療法を医師と検討してみてください。症状によっては、入院や休職など心身を休める方法が必要になります。

休養

うつ症状や環境によっては、しっかりとした休養が必要です。介護から離れることで、心身ともにうつ病の治療に専念できます。

仕事をしながら介護をしている場合は、介護休業の取得も検討してみてください。介護休業は、2週間以上にわたり常時介護を必要とする家族を介護するために、長期休みを取得できる制度です。

一定の条件を満たしていれば、雇用保険から給付金が受け取れる可能性もあります。必要な場合は、勤務先の担当者に確認してみましょう。

精神療法

病院での精神療法も、大切な治療のひとつです。カウンセリングを受けることで、現在の思考や行動などを見直すことができます。現在の状況を客観的に評価したうえで、適切な治療へと結びつけることができるでしょう。

介護うつは、心身の不調を1人で抱え込んでしまうことで症状が悪化するといわれています。症状を深刻化させないためにも、早めに受診し誰かに状況を話すことが大切です。

投薬治療

介護うつは、脳内で分泌されるセロトニンやノルアドレナリンなどが関与している場合があり、症状によって医師から抗うつ薬などが処方されます。

処方された薬は、適切に内服するよう心がけてください。多くの薬は少量ずつ服用し、2~3週間時間をかけて治療することで徐々に効果が現れます。投薬治療によって、早期にうつ症状を軽減できる場合もあるでしょう。

参考:健達ネット「介護うつとは?介護疲れの原因や対策を解説!」

介護ができなくなってしまった場合の対処法

ここからは、介護うつで介護ができなくなった場合の対処法を解説します。前述した介護休業をはじめ、経済的な負担を減らすための制度も参考にしてください。公共の相談場所への相談もひとつの方法です。

1人で介護を抱え込んでいると、うつ症状が改善した後も再発する可能性があります。介護うつをひとつのきっかけとして、現在の介護環境について見直しを図りましょう。

公共の相談場所に相談してサポートを受ける

介護ができなくなったら、公共の機関に相談し、サポートを受けましょう。主な相談先は、住んでいる地域に設けられている地域包括支援センターです。

地域包括支援センターは、地域に暮らす高齢者を支えるための「介護予防ケアマネジメント」「総合相談」「包括的・継続的ケアマネジメント」「権利擁護」などの業務をおこないます。

高齢者の各種相談に幅広く対応しているため、現在の状況で利用できるサービスや制度について問い合わせてみてください。

介護休業を取得する

前述したように、仕事をしながら介護をしている場合は、介護休業を取得できる場合があります。介護休業の主な取得条件は、以下の2点です。

  • 正社員やアルバイトなどの雇用形態に関わらず、現在の職場に入社してから1年以上経過している
  • 介護休業の取得予定日から起算して93日を経過後から6ヶ月以内に労働契約期間が満了しない

条件に当てはまれば、介護を要する対象家族1人に対し、通算93日まで休みが取得できます。介護うつで介護ができなくなり、まとまった休養が必要な場合は介護休業の取得も前向きに検討してみましょう。

経済的な負担を減らす3つの制度を利用する

経済的な負担が大きい時は、以下の3つの制度の利用を検討してみてください。

  • 制度1.健康保険の傷病手当金
  • 制度2.自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)
  • 制度3.精神障害者保健福祉手帳

これらの具体的な内容については、各自治体の窓口のほか前述した地域包括支援センターでも相談できます。何もできないと諦める前に、まずは利用できる制度がないか確認してみましょう。

制度1.健康保険の傷病手当金

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられている制度です。病気やけがなどが理由で、働くことができない場合に支給されます。

支給される期間は、支給開始日から通算して1年6カ月までです。具体的な支給条件や金額は状況により異なるため、自治体の窓口や勤務先の担当者に確認することをおすすめします。

制度2.自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)

自立支援医療は、精神医療を受ける際の通院医療費の自己負担を軽減する公費負担医療制度です。精神医療の対象には、うつ病も含まれています。

自立支援医療では、通常であれば3割の医療費負担が1割に軽減されます。制度を費用するためには、市町村の担当窓口で手続きが必要です。介護うつの治療費が心配な場合は、担当窓口に相談してみると良いでしょう。

制度3.精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定する手帳です。うつ病のほか、統合失調症やてんかんなどの精神障害が対象になります。

精神障害者保健福祉手帳を持っていると、公共料金の割引や税金の控除、減免といったサービスの利用が可能です。地域によっては、公共料金の割引サービスも受けることができます。

必要な場合は申請書や診断書などを用意し、市町村の担当窓口で申請を行ってください。

参考:健達ネット「介護うつとは?介護疲れの原因や対策を解説!」

介護うつの予防法・症状を緩和するためにできること

介護うつを予防し、症状を緩和するためには100点の介護を目指そうとしないことが大切です。また、以下の4つの予防法もあわせて心がけましょう。

  • 予防法1.介護サービスをうまく利用する
  • 予防法2.食生活を見直す
  • 予防法3.適度な運動を行う
  • 予防法4.国の介護支援を理解し金銭的な不安を緩和する

1人で介護負担を抱え込まずにサービスをうまく利用するほか、自身の生活を見直すことも重要です。前述したような介護支援制度を理解しながら、金銭的な不安も緩和していきましょう。

【重要】100点の介護を目指そうとしないこと

介護うつを予防するには、100点の介護を目指そうとしないことが重要です。前述したように、介護うつになりやすい人には完璧主義の傾向があります。100点の介護を目指すことが自身を追い込み、介護うつを発症するリスクを高めるケースもあるでしょう。

何でも完璧にしないとと思いこまず、「60点できれば上出来」くらいの心持ちで介護にあたるよう意識してみてください。

予防法1.介護サービスをうまく利用する

介護うつにならないための1つ目の方法は、 介護サービスをうまく利用することです。要介護状態になった人が利用できる介護サービスはたくさんあります。しかし、高齢者の状態変化や、介護者の状況によって、選ぶべきサービスが変わってくるのです。

これらの変化に適切に対応できるようにしておくことが、介護うつを予防するために重要です。ケアマネージャーや介護サービスの提供先と相談しながら、心身の負担を軽減できる体制を整えておきましょう。

予防法2.食生活を見直す

うつ病を予防するには、食生活を見直すことも大切です。1日3食、バランスの良い食生活を心がけましょう。

特にうつ病の人は、葉酸などのビタミンB群が不足しているといわれています。ビタミン不足を補うには、ほうれん草や春菊、小松菜などの野菜類がおすすめです。また、良質なタンパク質を含む肉や魚、大豆製品もうつ病予防に効果的な食品に挙げられます。

予防法3.適度な運動を行う

うつ病には、適度な運動が効果的だといわれています。運動が負担な場合は、1週間に1時間でも体を動かす時間を確保してみましょう。少し息が上がる程度のウォーキングでも、うつ病予防の効果を期待できます。

また、起床後すぐに太陽の光を浴びることもおすすめです。脳内のセロトニンが分泌され、気分の落ち込み改善につながります。

予防法4.国の介護支援を理解し金銭的な不安を緩和する

うつ状態になると、思考障害からお金の捉え方にもゆがみが生じやすくなります。うつ症状を進行させないためにも、国の介護支援を理解して金銭的な不安を緩和しましょう。

介護に忙しくて気持ちに余裕がないときは、自分で調べることもできないかもしれません。そんなときは、前述したような地域包括支援センターや自治体の窓口に相談してみてください。公的なサポートで経済的な負担を軽減できる可能性があります。

参考:LIFULL介護「介護うつとは?介護疲れからうつ病にならないために」

介護うつは改善が期待できるうつ病です

介護うつは、適切な治療で症状の改善が期待できます。状態を深刻化させないためにも、早めの受診し医師の診断を仰ぐことが大切です。

介護負担は1人で抱え込まず、第三者に協力を仰いだり相談したりするように心がけましょう。100点ではなく60点の介護を目指すことが、介護者と要介護者の双方にとって、より良いケアにつながります。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長