お役立ちコラム

訪問看護とは、在宅で療養を行なっている方とその家族を、専門家である看護スタッフが訪問して支援するサービスです。主治医の指示のもとで、訪問看護事業所からサポートを受けられます。

とても頼りになる訪問看護サービスですが、どのようなサービスを誰がしてくれるのでしょうか。ここでは将来訪問看護の必要があるかもしれないみなさんに向けて、訪問看護のサービス内容や受ける条件、費用について詳しく解説します。

訪問看護とは?

訪問看護とは、在宅で療養をおこなっている方とその家族を、看護スタッフが訪問して支援するサービスのことです。

病気や障がいがあっても、住みなれた自宅で暮らしたいと望むのは、当たり前のことでしょう。しかし「家族だけで対応ができるだろうか」「ひとり暮らしが続けられるか?」など不安に思うことも多いかもしれません。

訪問看護は、地域で生活する赤ちゃんから高齢者まですべての年代の方に、医療的なケアや支援をおこなう、頼りになるサービスなのです。

訪問看護で受けられるサービス内容

看護職やリハビリ職が、地域の訪問看護事業所から利用者の暮らす場所へ出向いて、医療的ケアを提供します。

訪問看護でおこなえる具体的なサービス内容は、次の8つになります。

  1. 健康チェックと療養上のアドバイス
  2. 在宅リハビリテーション
  3. メンタル面のケア
  4. 疾病治療のための看護ケア
  5. 療養生活のサポート
  6. 療養環境のチェックと家族ケア
  7. ターミナルケア
  8. 関連サービスやその連携方法の助言

療養上のアドバイスやメンタル面のケアに関しては、利用者だけでなく家族に対しても同様に支援をおこないます。利用者の生活環境を整えるためにも、介護する家族の支援は重要な業務です。看護や介護の正しい技術を伝えたり、医療機関での診察や検査の結果をわかりやすく説明するケアもおこないます。

一般的な「看護」としての役割以外にも、在宅でのリハビリテーションも訪問看護でおこなうことが可能です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職によって、自宅での生活動作の訓練や助言をおこないます。

訪問看護の対象者は「訪問看護を必要とする方全員」

訪問看護の対象者は、他の介護サービスのように高齢者だけに限定されているわけではありません。子どもから大人まで、症状や障がいの重さにかかわらず、訪問看護を必要とするすべての人が対象となります。

訪問看護スタッフは「看護職・リハビリ専門職」

訪問看護のスタッフは、看護職とリハビリ専門職に大別できます。

看護職
  • 看護師
  • 准看護師
  • 保健師
  • 助産師
リハビリ専門職
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士

上の表にある職種のスタッフが利用者の暮らす場所を訪問し、医療的ケアやリハビリテーションを提供します。訪問看護の目的は、利用者の自立支援とその人の尊厳を守りながら療養生活を支援することです。

訪問看護と在宅看護の違い

訪問看護と在宅看護は言葉こそ似ていますが、その中身は大きく違います。

在宅看護とは、自宅療養が可能になった利用者を、病院ではなく自宅で家族によってケアするものです。慢性的な病気や、自宅でのコントロールが可能になった疾患では、住み慣れた自宅で落ち着いて療養することが効果的といえます。

一方訪問看護は、自宅にいながら専門スタッフによる医療行為が受けられるサービスです。医師の指導にもとづいて、療養上の世話や医療処置をおこないます。

訪問看護のメリットは、自宅にいながら健康状態のチェックや、インスリン注射や褥そう処置等の医療行為が受けられるところです。ケースによっては、理学療法士や作業療法士などがリハビリテーションを行うこともあります。

訪問看護のサービス時間

訪問看護のサービス時間は、介護保険と医療保険によって違いがあります。共通しているのは、サービス時間の長さによって料金が定められていることです。

それぞれのサービス時間の区分について説明します。

【介護保険の場合】20分・30分・1時間・1時間半の4区分

介護保険の場合は、訪問時間により4つの区分に分かれています。

  • 20分未満(※)
  • 30分未満
  • 30分以上1時間未満
  • 1時間以上1時間30分未満

(※)20分未満でリハビリ職の訪問は区分が異なる

訪問時間は、ケアマネジャーの作成するケアプランにおいて、定められた必要な支援をおこなうための所用時間です。

【医療保険の場合】1回30分〜1時間半程度(例外あり)

医療保険の場合は原則として、訪問は1日1回で週3回まで、時間は基本的に1回30分~1時間半程度と定められています。

しかし厚生労働大臣の定める疾病等と、特別訪問看護指示期間内の利用者に限っては、毎日かつ1日複数回の訪問が可能です。この場合の例外として、1時間半を超える訪問も可能となっています。

訪問看護の訪問回数

訪問看護の訪問回数は、利用者の状態に応じて変化します。介護保険のサービスを受ける場合には、ケアマネジャーがあらかじめケアプランを作成し、それに準じた訪問が行われます。在宅で訪問看護サービスを受ける方は、他の介護サービスを併用している方も多いため、実際の訪問回数は週1~2回程度になるかもしれません。

医療保険の訪問看護を受ける場合は、週1~3回の訪問となります。ただし厚生労働大臣が認める疾病等の患者は週4回以上の利用が可能になります。また特別訪問看護指示書が発行された場合は最長で14日連続の訪問も可能です。詳しい内容は、主治医やケアマネジャー、訪問看護事業所に確認しましょう。

訪問看護1回あたりの料金は「数百円から数千円」

訪問看護を介護保険で利用する場合の料金を、事業所別の表にしました。実際にはこのほかにさまざまな加算がつくため、あくまでも目安として参考にしてください。

【指定訪問看護ステーション】

時間 自己負担額(1割)※1 准看護師訪問の場合
20分未満 313円 282円
30分未満 470円 423円
30分以上1時間未満 821円 739円
1時間以上1時間半未満 1,125円 1,013円

1単位10円で計算(加算は含まず)
※1 自己負担額は所得によって2~3割になる場合あり

【病院または診療所】

時間 自己負担額(1割)※1 准看護師訪問の場合
20分未満 265円 239円
30分未満 398円 358円
30分以上1時間未満 573円 516円
1時間以上1時間半未満 842円 758円

1単位10円で計算(加算は含まず)
※1 自己負担額は所得によって2~3割になる場合あり

【定期巡回・随時訪問介護看護事業所と連携する場合】

定期巡回・随時訪問介護看護事業所と連携する場合 1月につき2,954円

1単位10円で計算(加算は含まず)
准看護師による訪問が1回でもある場合:×98%
要介護5の利用者の場合:+800単位
医療保険の訪問看護が必要であるものとして主治医が発行する訪問看護指示の文書の訪問看護指示期間の日数につき減算:1日につき-97単位

出典:WAMNET「介護給付費単位数等サービスコード表(令和4年4月施行版)」より抜粋して作成

訪問看護を受けるまでの具体的な流れ

介護保険制度で訪問看護を利用したい場合には、まず要介護認定を受けていることが前提となります。すでに認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーに相談をしてみましょう。認定を受けていない場合は、市区町村の介護保険課または地域包括支援センターなどに要介護申請をおこないます。

医療保険で訪問看護を利用したい場合は、主治医またはお近くの訪問看護事業所に相談しましょう。

保険利用の場合は訪問看護指示書が必要

利用する制度に関わらず、訪問看護を利用するときは、必ず主治医からの「訪問看護指示書」が必要になります。訪問看護指示書を発行を受けるまでの手順を詳しく説明します。

訪問看護指示書とは

訪問看護を利用する場合、介護保険でも医療保険でも訪問看護指示書の交付を受ける必要があります。

これは利用者の主治医に依頼して、訪問看護事業所あてに発行してもらいます。訪問看護指示書には有効期限があり、主治医が発行してから6ヶ月間有効です。期限以降も継続して訪問看護を利用したい場合には、訪問看護事業所側から主治医に交付を依頼します。主治医は診察時の結果と、訪問看護事業所から提出された訪問看護計画書と訪問介護報告書をもとに、訪問看護の必要性を判断するのです。

訪問看護指示書作成の流れ

介護保険で訪問看護を利用する場合、ケアマネジャーの作成するケアプランに訪問看護が位置付けられます。通常はケアマネジャーが主治医に対して、訪問看護指示書を発行するように依頼することがほとんどです。

訪問看護指示書が訪問看護事業所に届くと、訪問看護計画書とともにケアマネジャーに提出されます。ケアマネジャーは他サービスと調整をおこないながら、ケアプランに訪問看護を組み込みます。介護保険における支給限度額の範囲内で、訪問看護の利用回数が設定されることが一般的です。

介護保険における訪問看護は、支給限度額の範囲で考えると利用回数が制限されてしまいがちです。訪問看護事業所によっては、自費での訪問看護を提供している場合もあります。より手厚い看護を希望する場合には、相談してみるとよいでしょう。

特別訪問看護指示書があれば頻回な訪問も可能

特別訪問看護指示書は、すでに訪問看護指示書が交付されている利用者が対象となる、医療保険での書類です。病状が急激に悪化した場合や退院直後など、頻回に訪問看護によるケアが必要と主治医が認めた場合に交付されます。

特別訪問看護指示書は利用者の主治医によって発行されますが、訪問看護指示書と同一の医師であることが求められますので注意しましょう。有効期限は、医師の診察を受けた日から14日以内となっています。原則、月に1回の交付と定められていますが、気管カニューレ使用中または真皮を超える褥そうのある方は、月2回までの交付が認められます。この場合は、医療保険での訪問看護を連日受けることが可能です。

訪問看護の相談窓口

保険制度によって若干の違いはありますが、訪問看護の利用を検討する場合は、病院のソーシャルワーカーや担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。医療保険が使える場合は、主治医に相談するとその後の書類作成がスムーズな場合があります。

訪問看護と合わせて利用できる保健・医療・福祉サービス

在宅で生活する上で、訪問看護と組み合わせて利用できるサービスは数多くあります。その中でも代表的なものを紹介します。

自宅訪問型の介護サービス

自宅訪問型サービスとして代表的なものには、訪問介護や訪問入浴介護があります。

訪問介護は、自宅にホームヘルパーが訪ねてサービスをおこなうものです。利用者本人の食事作りや買い物、居室や寝室の掃除など生活援助をおこなったり、入浴や排せつの介助など身体介護をおこなったりします。一定の研修を受けた介護福祉士であれば、利用者への喀痰吸引や経管栄養が可能なため、訪問看護との組み合わせもよく見られます。

訪問入浴介護は、移動式の浴槽を持ち込んで、居室などで入浴するサービスです。浴室での入浴が難しい、寝たきりの方でも全身欲による入浴がおこなえます。通常は看護師と介護職員(オペレーターとケアエイド)の計3名で訪問し、入浴前の健康チェックから洗髪洗身、浴後のケアまで対応してくれます。

通い・宿泊型の介護サービス

通いのサービスで代表的なものは、デイサービスでしょう。日中の数時間をデイサービスで過ごしていただき、入浴や昼食、レクリエーションやリハビリなどを提供するサービスです。自宅にこもりがちな高齢者の外出や他社交流の機会を確保することはもちろん、同居家族の介護負担軽減の目的もあり、一般的に広く利用されています。

宿泊型の介護サービスでは、ショートステイが最初に挙げられるでしょう。短期的な入所として宿泊をともなう介護サービスをおこないます。

福祉用具のレンタル・販売サービス

福祉用具のレンタル・販売のサービスも、訪問看護との併用が可能です。福祉用具のレンタルは、ベッドや手すり、車椅子など多くの品目を扱っていますので、必要なものがあれば福祉用具専門相談員に問い合わせてみましょう。

福祉用具販売は、排せつや入浴などの物品で貸与にふさわしくない身体に直接触れるものを扱っています。

その他介護保険・福祉制度外のサービス

介護保険をはじめとする福祉制度では利用基準が厳しく定められているため、サービスの種類や利用方法に制限がある場合があります。制度外のサービスは、介護認定を受けていない方でも利用ができ、比較的自由度が高いのが特徴です。

具体的な例には、介護タクシーや訪問理美容、緊急通報システムなどが挙げられます。

制度外のサービスは地域によって格差が大きいため、お住まいの地域にどのような制度があるのかは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに問い合わせてみてください。

訪問看護で在宅療養の負担を和らげ快適に

訪問看護は利用者の尊厳を保ちつつ、健康のチェックや療養生活のためのアドバイスから、医療的ケアやメンタルケア、関連サービスとの連携などまで手厚いサポートを受けることができる介護・医療サービスです。

介護保険の要介護認定を受けてから、サービスの利用を始めるのが一般的です。ただし、利用者の状態の変化に合わせ、医療保険に切り替えたり訪問回数を増やしたり、比較的柔軟な対応ができるのが訪問看護の特徴でもあります。

訪問看護はルールが複雑です。主治医やケアマネジャー、看護師などに相談することで上手に活用できます。利用者だけでなく家族も含めて在宅療養の負担を和らげ、快適な療養生活を送りましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長