お役立ちコラム

介護が必要な方の家族にとって、受け入れてくれる施設を見つけることはこれからの生活に大きな影響を与える重要なポイントです。ただようやく見つけた施設で申し込みの後受け入れ拒否され、入居できないこともあります。なぜ、受け入れを拒否されるのでしょうか。

今回は、介護施設から受け入れ拒否されるケースと対処法を解説します。

介護施設が受け入れ拒否する5つのケース

日本の少子高齢化に伴い、介護施設の利用者は増える一方です。介護施設にとっても深刻な状況で、やむを得ず受け入れを拒否するしかない場合もあります。

介護施設が受け入れ拒否する理由は、主に5つ挙げられます。

  • ケース1.施設の入居条件を満たしていない
  • ケース2.医療行為が常時必要
  • ケース3.安全な集団生活が難しい
  • ケース4.感染症を患っている
  • ケース5.身元保証人がいない

以下で、詳しく見ていきましょう。

ケース1.施設の入居条件を満たしていない

1つめのケースは、その介護施設の入居条件を満たしていない場合です。介護施設は通常入居するための基準を設けており、これを満たしていないとそもそも入居ができません。

以下は、介護保険制度によって定められた要介護度の基準です。

介護施設の種別 基準となる認定要介護度
特別養護老人ホーム 要介護3以上
介護老人保健施設 要介護1以上
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 要支援2以上

グループホームの場合、他にも入居希望者の住所と施設の住所が同じ市町村であることも要件とされています。このような全国共通の基準とは別に、次のような介護施設ごとに定められている基準もあるので注意が必要です。

  • 保証人を立てなくてはならない
  • 利用料の支払いがクレジットカード限定
  • 要介護2以下(要介護3以上に比べ介護加算=介護保険から得られる報酬が低い) など

これらの要件は、事前に問い合わせることで確認できます。まずは施設に問い合わせ、入居できるかどうか確認しましょう。

ケース2.医療行為が常時必要

入居を希望する方が常に医療行為を必要とする場合も、受け入れ拒否される可能性が高くなります。

介護施設は、介護サービスを提供するための施設です。介護と看護には、明確な違いがあります。

  • 介護:日常生活の困難や不自由を解消し、安全快適な生活を送れるようにサポートすること
  • 看護:専門的な医療の知識を駆使して、病気やケガのある方を医療面でサポートすること

なかには、介護老人保健施設のように医師や看護師が常勤していたり、医療機関に併設されいつでも医療行為が受けられたりといった施設もあります。しかし、ほとんどの介護施設では、医療行為は難しいのが現状です。

医療行為には、在宅酸素やバルーンカテーテルの管理、痰の吸引、点滴などが挙げられます。入居を希望する方がこのような状態にあれば、施設への確認が必要です。

ケース3.安全な集団生活が難しい

介護施設での生活は、集団生活です。そのため、安全な集団生活が難しい方も、受け入れ拒否される可能性は高くなります。

たとえば統合失調症などの精神疾患や認知症を患っている場合を考えてみましょう。それだけで受け入れ拒否されることはありませんが、症状として暴力や暴言が他の入居者とのトラブルの原因になったり、実際にケガをさせてしまったりする可能性が考えられます。

ただし、認知症対応に特化しているグループホームでは、認知症で拒否されることはありません。また普段生活する環境が個室か、多床室かによっても受け入れ基準は変化します。

施設に申し込むときは、介護施設の提供するサービス内容やスタッフの配置、周囲の環境などを加味して検討しましょう。

ケース4.感染症を患っている

感染症を患っている場合も、受け入れ拒否される可能性は高いです。介護施設内で感染を拡大させてしまうと、他の入居者も病状によっては重症化するおそれがあります。

そのため、多くの介護施設では受け入れの判断の際に医師の作成した健康診断書や診療情報提供書を参照し、感染症の有無を確認します。

感染症の種類によっては、入所を受け入れる介護施設もあるようです。施設を探すときは、感染症の方の受け入れについても重点的に確認しましょう。

ケース5.身元保証人がいない

身元保証人がいない場合も、介護施設は受け入れ拒否する可能性があります。入居や退去だけでなく、入居者の状態が変化したときやそれに合わせて治療やケアの方針を決めるとき、施設は必ず身元保証人に連絡します。万が一体調が悪化したときも、身元保証人がいないと対応が遅れてしまい、取り返しのつかないことになりかねません。

身元保証人がいない場合は、後見人を立てることで受け入れられたケースもあります。どうしてもという場合は、後見人についても併せて検討してみましょう。

受け入れ拒否された場合の2つの対処法

受け入れ拒否されてしまうと、落胆し、途方に暮れるかもしれません。そのようなときの対処法を2つ紹介します。

  • 対処法1.受け入れ拒否の理由を確認する
  • 対処法2.別の受け入れ先を探す

次の施設探しを進めるためにも、参考にしてください。

対処法1.受け入れ拒否の理由を確認する

まずは拒否された介護施設から、受け入れ拒否となった理由を確認しましょう。理由がただ「施設の規定のため」といった漠然としたものなら、より詳細に判断の根拠まで尋ねる必要があります。他の施設でも同じような理由で拒否される可能性が高いためです。

もし担当スタッフがうまく説明できなければ、施設の責任者に直接尋ねることをオススメします。施設責任者には、苦情として事実を確認し正式に回答する義務があるためです。

理由が納得できない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するという方法もあります。

理由に納得できないときの対処法:ケアマネに相談

理由に納得できないときは、施設や担当のケアマネ(ケアマネジャー)に相談してみましょう。ケアマネは、介護の必要な方に対して介護サービス提供のための計画書(ケアプラン)を作成し、関係者と連携・調整してより円滑にサービスを実現することが仕事です。

また拒否された理由がケアプランであれば、プランを見直すことで受け入れてもらえる可能性もあります。ケアマネは多くの施設や医療従事者、担当者などと顔なじみであることが多く、独自のルートから情報を集めることも可能です。

拒否の理由への対処を含め、これからどのような対処法があるか正直に相談し、施設探しに多いに役立てましょう。

理由に納得できないときの対処法:地域包括支援センターに相談

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを介護・医療・福祉などさまざまな側面から支える総合相談窓口です。市町村が主体となって設置し、専門知識を備えた職員が介護や介護予防サービス、日常生活支援などの相談に対応しています。

介護施設の受け入れ拒否についても、地域包括支援センターに相談するのがオススメです。拒否を覆すことは難しいかもしれませんが、別の有効な手段や受け入れ施設などの新たな情報を得られる可能性があります。

対処法2.別の受け入れ先を探す

介護施設への受け入れを拒否された場合には、拒否された理由をもとに、改めて対応可能な他の受け入れ先を探すのが賢明です。

受け入れの基準は、介護施設ごとに異なります。ある介護施設で拒否されても、類似する別の介護施設では受け入れられたというケースは少なくありません。

「常時医療行為を必要とする」「認知症や精神疾患がある」といった事情があれば、ケアマネや地域包括支援センターに先に伝えておくことで、一度に複数の介護施設に申し込むなどより効率よく探せるようになります。少しでも可能性がある方法を試すなど、何かしら行動を続けることが大切です。

介護施設から退去勧告される4つのケース

これまで受け入れてもらっていた介護施設から、退去勧告されてしまうケースもあります。理由には、以下の4つが考えられます。

  • ケース1.常に医療行為が必要になった
  • ケース2.要介護度が軽くなった
  • ケース3.トラブルが頻発するようになった
  • ケース4.費用の滞納が続いた

それぞれの理由を比較しながら、1つずつ詳しく解説します。

ケース1.常に医療行為が必要になった

介護施設は、介護サービスを提供する施設です。常時医療行為が必要な状態に変化すると、施設からの退去を求められる場合があります。

医療行為によっては、対応可能な施設もあるため確認が必要です。しかし治療のために病院に入院し、退院後は元いた施設に戻れないケースも十分あり得ます。

一般的に、3か月以上入院が続くと規約に従って退去を求められるのも現状です。

ケース2.要介護度が軽くなった

要介護度は、一度認定されたらそのままというわけではありません。定期的に状態を確認し、より重い介護度と認定されることも、逆に軽く認定されることもあります。

要介護度が軽くなることは、喜ばしいことです。しかし施設によっては基準を満たさなくなるため、退去を求めらるでしょう。

ケース3.トラブルが頻発するようになった

他の利用者とのトラブルが頻繁に発生するようになると、退去を求められる場合があります。

とくに認知症を患っている方には、注意が必要です。普段の様子に暴言や暴力、妄想によって「大切にしているものが盗まれた」と信じて吹聴するといった症状がみられると、他の利用者への影響を勘案し、より大きなトラブルに発展する可能性があります。

他の利用者の安全や安心を確保するため、退去を求められるのです。

ケース4.費用の滞納が続いた

介護施設は、多くのスタッフを抱える1つの事業者です。入居やケアプランの見直しの際、受け入れたはずの費用を支払わず、滞納が続くとサービスを提供できなくなるため、退去を求められます。

施設に受け入れてもらっていることに対する対価として、支払いが滞らないよう努めましょう。

受け入れ可能な介護施設の探し方

介護施設としても、受け入れられるのならその限度まで受け入れ、サービスを提供するのが通常です。一方で受け入れてもらえる施設を探す方は、施設にどのような基準があるか、基準を満たしているかどうか正確に判断できません。この両方の架け橋となるのが、ケアマネや地域包括支援センターといった第三者の立場です。

受け入れ可能な介護施設は、自身で探すことも重要ですが、このような第三者の意見を取り入れることで効率よく探せるでしょう。

また候補として上がった施設は、書類やパンフレットだけでなく実際に見学し、実際の介護の様子や雰囲気などストレスなく過ごせるかどうか確認することが大切です。

希望する介護施設が簡単に見つかるとは限りません。納得でき、受け入れ拒否されない介護施設探しは、根気よく続けることが必要です。

介護施設の受け入れ拒否は第三者に相談しよう

介護施設の受け入れ拒否には理由があるため、まずはその理由を確認することが大切です。ここで伝えられた理由は、今後の施設探しに大いに役立つでしょう。

理由に納得がいかなければ、ケアマネや地域包括支援センターといった第三者への相談がオススメです。いずれも介護の状況に詳しく、さまざまな施設の情報にも精通しています。入居希望者の状況や介護の必要性を踏まえ、より良い介護の方法を提案してもらえるかもしれません。

施設探しには、家族の協力が必要です。ケアマネや地域包括支援センターなどの意見を参考に、効率的に進める必要もあります。無理のない程度に積極的に探し、ぜひ希望に合った施設を見つけてください。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長