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お役立ちコラム
2023年7月15日
家族が要介護や認知症になると旅行に行けない?介護中でも旅行を楽しむ方法
若い頃から旅行が好きな高齢者にとって、旅行に行けなくなることはつらいことでしょう。
旅行業界では、介護が必要な方も安全・安心に旅行を楽しむためのさまざまなサービスが提供されています。今回は、要介護や認知症になった家族と旅行を楽しむ方法やその際に気をつけたいポイント、利用できるサービスを解説します。
目次
要介護・認知症の家族とは旅行に行けない?
身体が不自由になったり、認知症を患ったりして介護が必要になれば、「旅行に行くのは難しい」と考えるのは当然かもしれません。旅行は、介護する側にとっては異なる環境で安全を確保する、「チャレンジ」です。
旅行には、日常から離れて心身をリフレッシュさせる効果が期待できます。この効果は、介護する側だけでなく介護される側にとっても同じです。
東北大学と旅行会社のクラブツーリズムによる共同研究では、「旅行に行くことが多い人ほど人生に対する失望感が低く、目的を持って旅行に出かける人ほど人生に対する満足感やポジティブな気持ちが強い」ことがわかっています。これは認知症予防で重要とされる、軽い運動と知的好奇心の高さを満たす要素です。
現実的に考えれば、乗り物の乗り降りや移動手段の選定、移動の時間や休憩の頻度など、様々なことを考えなければなりません。逆に言えば、これは「しっかり準備すれば旅行できる」という証拠です。
日々の介護に前向きに取り組むためにも、旅行に出かけることは大切なリフレッシュの方法の1つといえるでしょう。
参考:クラブツーリズム「東北大学との認知症予防に関する共同研究結果 一定の条件下の旅行における認知症リスク低下の可能性を確認」
要介護者と旅行する際に気を付けたいポイント
介護が必要な方との旅行では、できるだけ無理のないプランにする必要があります。介護する側だけが負担するのではなく、旅行で利用できるさまざまなサービスをうまく利用することも重要です。
ここでは、要介護者と旅行するとき気をつけたいポイントについて解説します。
旅行のスケジュールにはゆとりを持たせる
要介護者との旅行は、計画段階でスケジュールにゆとりを持たせる必要があります。
高齢になると、思うように歩けなかったり急にトイレに行きたくなったりと、予定通りにいかないことが多くなりがちです。また、「せっかくの旅行だから」と行きたい場所をいくつも盛り込むと、スケジュールがタイトになってしまいます。要介護者はもちろん、介護する側も疲れてしまえば、ストレスになるだけです。
とくに認知症の方は、いつもと違う旅先の環境下に脳が適応しようとしていつもより疲れやすくなるため、どこで休憩が必要になるかわかりません。初めは楽しそうでもだんだんと疲れがたまり、集中力が切れて思わぬ危険を招いたり、眠ってしまったりする可能性もあります。
旅行中は、何が起こるかわかりません。予定をぎっしり詰めるのではなく、ゆとりを持って計画することが大切です。
休憩場所、トイレの場所を確認しておく
旅行中、突然休憩が必要になったり、トイレに行きたくなったりしたときに備えて、休憩場所やトイレの場所は事前に確認しておくことが大切です。
高齢になると、トイレが近くなる傾向があります。なかには、事前にトイレに行きたいと言わない場合があります。行く先々でのトイレの場所を確認し、車いすでの移動なら多目的トイレなのかどうかも大切です。行く先のパンフレットやホームページなどでしっかり確認し、利用していればいつもより多めのオムツや尿取りパッドなど必要なものを多めに用意しましょう。
また急に疲れてしまったときに備えて、ゆっくり休憩できる場所も確保する必要があります。普段あまり歩かない人が急に歩くと、足を傷めたり歩けなくなったりするかもしれません。そんなときいくらでも休憩できる場所があれば、その後のスケジュールを変え、疲れをゆっくり癒やすこともできます。
旅行の目的は、行くことではなく楽しむことです。無理なく、疲れすぎないよう注意する必要があります。
身体状況に応じた乗り物を手配する
旅行では、適切な移動手段を選びましょう。しかし要介護者の中には長い距離を歩いたり、長時間座ったままでいたりすることが難しい方もいます。かかる時間や乗り降りの難しさなどにも配慮し、身体状況に応じた乗り物を手配することが大切です。
たとえば車いすで新幹線を使うなら、車いす対応トイレが備わっており、シートの足ものが広いグリーン車をオススメします。タクシーやレンタカーでも車いすでの乗り降りがしやすい車種を選び、電車や飛行機の利用でも事前に連絡しておくとスムーズな利用が可能です。
急な予定変更にも対応できるように、タクシー会社の連絡先も確認しておきましょう。
体調不良に備えておく
寒かったり暑かったり、急に雨が降ってきたり、場所によっては気圧が変わることもありえます。環境の変化は体調にも影響するため、急な体調不良にも十分備えておくことが必要です。
かかりつけ医に相談すれば、医療施設を紹介してもらえる場合もあります。移動距離が長い場合には、近隣の医療機関などをチェックしておきましょう。
頭痛や車酔いが心配であれば常備薬を、足や腰が痛くなりがちな方にはいつも使う貼り薬などを携帯して、考えられる体調不良に備えましょう。
バリアフリー対応型の宿泊施設を選ぶ
旅先で宿泊する施設も、身体状況に応じて選ぶ必要があります。とくに車いすを利用したり、自立歩行が難しかったりする場合には、バリアフリーに対応した施設を選びましょう。認知症でせん妄症状が現れ、突然予想しないような行動を取ることがあるかもしれません。転倒のリスクを避けるためにも、バリアフリーは重要です。
車椅子を利用しているのであれば、和室よりも洋室がよいでしょう。寝具は、敷布団よりベッドをオススメします。これは車椅子のままベッドの隣まで移動でき、寝起きがしやすいためです。
部屋を選ぶ際には、部屋で食事をとれるのか、部屋に多目的トイレや浴室があるかも確認しましょう。さまざまな事態に備えられる、充実した施設を選ぶ必要があります。
要介護者との旅行に役立つサービス
昨今は、介護が必要な方でも旅行しやすいよう、さまざまなサービスが用意されています。とくに要介護者との旅行が初めての場合は、介護する側の負担を減らしながら楽しむことが重要です。
ここでは、代表的なサービスをいくつか紹介します。旅行をより楽しむためにも、ぜひ活用してください。
旅行会社の介護旅行サービス
介護旅行サービスは、旅行会社が提供する要介護者のための旅行プランです。旅行中に必要な介助や夜間の見守り、プランによっては看護師による医療的な管理が受けられる場合もあり、要介護者はもちろん介護する側も安心して旅行を楽しめます。
宿泊施設はバリアフリーの施設を選べる上、必要な介護タクシーなども旅行会社が手配。必要であれば、車椅子や四点杖などの福祉用具もレンタルできて便利です。
旅行する要介護者の状態や希望ごとに、予算に合わせた旅行を計画できるメリットもあります。利用したいときは、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみましょう。
トラベルヘルパー
トラベルヘルパーは、要介護者の外出を支援する専門家です。介護技術と旅行の業務知識の両方を備えています。
体が不自由だったり健康に不安がある方にとっては、外出や旅行の不安は大きいでしょう。トラベルヘルパーは、介護があ必要な方の外出や旅行を臨機応変にサポートします。
トラベルヘルパーへの依頼目的は、旅行や日常的な外出だけでなく、親族の結婚式や同窓会への外出など多彩です。要介護者と外出・旅行したいのであれば、地域包括センターやケアマネジャーに問い合わせ、トラベルヘルパーの依頼を相談してみるとよいでしょう。
介護タクシー・福祉タクシー
介護タクシーや福祉タクシーとは、要介護者を目的地まで送迎するサービスです。
- 介護タクシー:介護保険タクシーともいい、ケアプランに基づく利用届出によって申請するタクシーサービス。介護保険が適用されるため比較的低料金で利用できるが、「要支援者」は対象外で、要介護者以外の同乗は原則として認められていない
- 福祉タクシー:とくに届出などは必要なく利用できるが、ドライバーは乗り降りの介助など身体的介助はできず、料金は全額負担
比較的近い場所への旅行であれば、介護タクシーだけの利用でもよいかもしれません。利用する際は、受けられるサービス内容や費用について、詳しく確認しておくことが大切です。
在宅介護中で旅行に行けないときにおすすめのサービス
なかには「在宅介護中のため、大好きな旅行に行けない……」という悩みを持つ方もいるでしょう。介護では思うようにならないことも多く、ストレスがたまりやすいものです。ときには介護から離れて、リフレッシュすることも必要があります。
そのようなときには、介護保険サービスの利用を活用しましょう。以下で詳しく紹介します。
訪問介護・訪問看護
介護をする方が安心して出かけるために、訪問介護や訪問看護を利用するのもオススメです。介護保険サービスは、ケアマネジャーの作成するケアプランに基づきます。介護者が不在の際の見守りにもなるでしょう。訪問介護では、必要な生活介助や身体介助を、訪問看護では健康観察や医療的処置などが受けられます。
ただし、訪問看護を利用するには、主治医による訪問看護指示書が必要です。まずは、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
デイサービス(通所介護)
介護者不在の間、要介護者がデイサービス(通所介護)を利用する方法も有効です。
デイサービスを利用する場合、要介護者は日中サービズを提供する施設に行き、そこで食事や入浴ができます。帰宅するまでの間、介護する側の方は自由に過ごせます。旅行はもちろん、自身の通院や美容院、買い物、ランチなど安心して自宅を空けることができるでしょう。
利用にはケアマネジャーに相談し、ケアプランに加えてもらう必要があります。
ショートステイ(短期入所生活介護)
仕事や旅行などのため、1日から数日自宅を留守にする場合はショートステイが利用できます。ショートステイとは、1日から30日程度の比較的短期間、要介護者を施設で預かり介護してもらう介護保険サービスです。
利用を希望する方は多く、実際の利用までに数か月以上かかる場合もあります。旅行での利用を希望する場合は、十分余裕を持って計画しましょう。
レスパイト入院(介護家族支援短期入院)
レスパイト(respite)は、「一時中断」「小休止」「猶予」といった意味を持つ語です。とくに介護においては、介護する側の方が一時的に介護を離れ、リフレッシュすることをいい、最近では「レスパイトケア」という語のもとになっています。
なかでも要介護者が一時的に入院するレスパイト入院は、食事や排泄といった介護だけでなく必要な医療管理やリハビリを受けることもできるサービスです。利用できるのは、介護保険によるショートステイの利用が難しく在宅療養しており、医療的な管理や介助を常に必要とする要介護者に限られています。
通常、利用できる期間は最長でも2週間程度です。受け入れ条件は医療機関によってことなるため、実際に利用したい場合は事前に確認する必要があります。
介護中は旅行に行けないと諦めずサービス利用を検討しよう
在宅介護では、介護者も要介護者もリフレッシュが必要です。そのようなときは、思い切って旅行に出かけてはいかがでしょうか。
ただし旅行では環境が大きく変わるため、要介護者の心身の状態に配慮する必要があります。休憩場所やトイレをチェックし、移動に使う乗り物も利用しやすいものを選ぶことが重要です。
ほかにも、デイサービスやショートステイ、レスパイト入院なども利用できます。利用できるサービスは適切に利用し、介護者自身の健康にも配慮することが大切です。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長