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お役立ちコラム
2024年10月15日
企業年金ってなに?年金の種類や基礎知識など、日本の年金制度の仕組みを解説
日本の年金制度は、老後の生活を支える重要な仕組みです。しかし、その複雑さから正確に理解していない人も多いことでしょう。
この記事では、企業年金を中心に、公的年金や私的年金の種類とその仕組みについて詳しく解説します。老後の生活に備えるためにも、年金制度を正しく理解しましょう。
現在の年金制度について
日本の年金制度は、老後の生活を支えるための重要な仕組みです。現在、日本の年金制度は「3階建て構造」と呼ばれる形を取っており、公的年金と私的年金が組み合わさることで、幅広い層に対応しています。
日本の年金制度の詳しい内容を見ていきましょう。
日本の年金制度は3階建て構造
日本の年金制度は、次のような「3階建て構造」と呼ばれる仕組みになっています。
- 1階部分:国民年金
- 2階部分:厚生年金
- 3階部分:私的年金
日本の年金制度は3階建ての構造を持つことで、老後の生活を多面的にサポートする仕組みが整っています。次項で、それぞれの年金制度について詳しく解説します。
1階・2階:公的年金
公的年金は日本の年金制度の基礎部分であり、安心して老後を過ごすための重要な資金源です。公的年金は1階部分の国民年金と、2階部分の厚生年金から成り立っています。
国民年金は20歳以上60歳未満のすべての国民が対象で、基礎年金と呼ばれることもる制度です。厚生年金は主に民間企業の会社員や公務員を対象としており、国民年金に上乗せされる形で支給されます。
この2つの公的年金制度は、社会保険方式を採用しており、現役世代が保険料を支払うことで、引退した世代の年金を支える「世代間扶養」の考え方に基づいて運営されているのが特徴です。また、国庫負担も一部含まれており、国全体で支える仕組みになっています。
公的年金の大きな特徴は、老後だけでなく、障害が発生した場合や遺族になった場合にも支給されることです。そのため、万が一の事態に備えることができる安心感があります。
3階:私的年金
私的年金は、公的年金を補完するために個人や企業が積み立てる年金制度です。企業が福利厚生の一環として提供する「企業年金」や、個人が任意で加入する「個人年金保険」などがあります。この私的年金を利用することで、公的年金だけでは不足しがちな老後の生活資金を補うことが可能です。
私的年金の種類や運営方法はさまざまで、保険料や年金額も異なります。自分のライフスタイルや将来の計画に合わせて、最適な私的年金を選ぶことが大切です。
年金制度の必要性
年金制度は、日本に住む20歳から60歳までの働ける世代が加入し、保険料を支払うことで成り立っています。この制度は、現役世代が高齢者や障害者、遺族に対して年金を給付する仕組みであり、世代間の支え合いを基本としています。これは「賦課方式」と呼ばれ、社会全体で将来のリスクに備えるための重要な制度です。
もし年金制度が存在しなければ、個人や家族だけで老後の生活や介護、病気やケガによる障害、さらには死亡による遺族の生活費をすべて賄わなければならなくなります。これらの費用をすべて個人で準備するのは非常に難しいでしょう。こうしたリスクに社会全体で対応するために、年金制度は必要不可欠なものといえます。
公的年金制度について
ここからは、公的年金制度にフォーカスして見ていきましょう。前述したように、日本の公的年金制度は、2階建ての構造になっており、国民年金と厚生年金の2つです。公的年金制度の概要と被保険者の種類などについて詳しく解説していきます。
公的年金は2階建て
日本の公的年金は2階建て構造で成り立っています。1階部分が「国民年金」、2階部分が「厚生年金」です。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
1階:国民年金
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入している基本的な年金制度です。このため、「基礎年金」とも呼ばれています。自営業者やフリーランスなど「第1号被保険者」に区分される人は、基本的にこの国民年金のみに加入しています。
さらに、国民年金には老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3つの給付があり、それぞれの状況に応じて受け取れる支援が異なるのが特徴です。これにより、老後だけでなく、万が一の障害や家族を失った場合にも、一定の生活を支える仕組みが整っています。
2階:厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員などが加入する公的年金の2階部分にあたります。これらの人たちは「第2号被保険者」と呼ばれます。第2号被保険者は、1階部分の国民年金にも自動的に加入しているため、将来受け取れる年金の額が国民年金のみの人よりも多くなるのが特徴です。
さらに、第2号被保険者に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」となり、年金保険料を負担することなく国民年金に加入しているものとみなされます。そのため、基礎年金を受け取ることが可能です。
なお、厚生年金の受給額は加入していた期間だけでなく、現役時代の収入額にも左右されることを理解しておきましょう。そのため、収入が多かった人ほど、将来受け取る年金額も多くなる傾向があります。
公的年金の被保険者の種類
公的年金の被保険者は、次の3つの種類に分けられます。
- 第1号被保険者
- 第2号被保険者
- 第3号被保険者
それぞれ詳しく見ていきましょう。
第1号被保険者
第1号被保険者とは、主に自営業やフリーランス、20歳以上の学生など、国民年金だけに加入している人たちのことを指します。この区分に該当する方は、自分で国民年金の保険料を納める義務があります。保険料は加入者全員が一律で、令和5年度の月額は16,980円です。
経済状況によっては、一定期間中の保険料の支払いが免除されたり、猶予が発生したりすることもあります。
第2号被保険者
第2号被保険者とは、会社員や公務員など、国民年金に加えて厚生年金にも加入している人のことを指します。第2号被保険者の保険料は、自分で直接支払うのではなく、勤務先がまとめて納めます。保険料の金額は収入に応じて変動し、労使折半といって勤務先と被保険者が半分ずつ負担する仕組みです。
具体的には、まず勤務先が保険料をまとめて支払い、その後、被保険者の毎月の給与やボーナスから被保険者が負担する分の保険料が差し引かれます。給与明細の「厚生年金保険料」という項目が該当し、その額は国民年金と厚生年金の保険料が合わさった額です。
第3号被保険者
第3号被保険者とは、専業主婦(夫)など、第2号被保険者に「扶養されている」配偶者のことを指します。第3号被保険者は、自分自身では年金の保険料を納める必要がありません。代わりに、配偶者が加入している厚生年金制度を通じて、配偶者の保険料によって第3号被保険者分の保険料も支払われる仕組みになっています。
公的年金の支給開始年齢
公的年金には、老齢基礎年金と老齢厚生年金があり、どちらも原則として65歳から受け取れます。ただし、受け取りには一定の条件が必要です。たとえば、老齢基礎年金を受給するためには、10年以上の保険料納付期間がないと受け取れません。
また、受給開始年齢を「繰り上げ」や「繰り下げ」することも可能です。繰り上げ受給を選択すると、受給開始を60歳から65歳までの間に早められますが、年金額が減額されます。一方で繰り下げ受給を選択すると、受給開始を66歳から75歳までの間に遅らせられ、年金額が増額されます。
このような選択肢を理解して、自分に最適な受給タイミングを決定することが重要です。
公的年金制度の強み6つ
公的年金制度は日本の社会保障制度の一環として、多くの強みを持っています。これから紹介する6つの強みを通じて、公的年金制度がどのように私たちの生活を支えているのかを見ていきましょう。
強み1.税制上優遇されている
公的年金の強みの一つは、税制上優遇されている点です。年金保険料は全額が「社会保険料控除」の対象となるため、所得税や住民税の負担が軽減されます。
一方、民間の個人年金保険の場合は控除額に上限が設定されているため、全額が控除されるわけではありません。
強み2.万が一に備えられる
公的年金の強みの一つとして、万が一のリスクに備えられることも挙げられます。公的年金は、老後の生活を支えるだけでなく、障害や死亡といった予期せぬ事態にも対応している点が魅力です。
たとえば、障害年金や遺族年金が支給されるため、働けなくなったり、家計を支える人が亡くなったりした場合でも、一定の金銭的支援が受けられます。
強み3.インフレに強い
インフレに強い点も公的年金制度の強みです。インフレが発生すると物価が上昇し、生活費が増加しますが、公的年金制度では「物価スライド制」が導入されており、これにより年金額が自動的に調整されます。具体的には、物価上昇に応じて年金額が引き上げられるため、生活費の増加に対応可能です。
個人で資産運用を行う場合、インフレに対応するのは難しく、専門的な知識や継続的な管理が欠かせません。しかし、公的年金では国がルールに基づいてインフレに対応した計算を行うため、特別な手続きや知識がなくても安心して利用できます。
強み4.免除・猶予の制度もある
公的年金制度には、経済的に困難な状況にある人々を支援するための免除制度や猶予制度があります。
たとえば、在学中や失業中などで保険料の納付が難しい場合には、これらの制度を利用できます。また、本人や配偶者の前年所得が一定の金額以下であれば、免除制度を利用できるため、家計的に厳しい状況にある場合には検討するとよいでしょう。
なお、免除期間中であっても、その期間は年金受給の「受給資格期間」に含まれます。このように、免除・猶予の制度を活用することで、経済的な負担を軽減しながらも、将来の年金受給に対する不安を取り除ける点は公的年金制度の強みといえるでしょう。
強み5.一生涯支給される
生きているかぎり、一生涯にわたって年金が支給される点も公的年金制度の大きな強みです。
人生100年時代といわれるように、私たちはいつまで生きるか予測がつきません。そのため、老後の資金をすべて貯蓄で賄うのは非常に難しいことです。しかし、年金が一生涯支給されることで、老後の生活費を安定して確保できるため、心強いサポートとなります。
強み6.年金額は納めた額以上になる
公的年金の強みの一つとして、受け取る年金額が納めた保険料以上になる点が挙げられます。厚生労働省の試算によれば、現在の若い世代が老後に受け取る年金額は、実際に納めた額を上回る見込みです。
これは、年金制度が世代間扶養の仕組みを採用しているため、現役世代が納めた保険料がそのまま年金受給者への支払いに充てられるためです。この仕組みにより、年金制度は破綻することなく運営され続けることが期待されています。
公的年金制度の注意点
公的年金制度には多くの強みがありますが、注意しなければならない点もいくつか存在します。ここでは、公的年金制度に関する主な注意点を挙げて解説します。
保険料を納めないと受給できない
公的年金を受給するためには、一定期間の保険料を納めることが必要です。とくに、国民年金の場合は自分で保険料を納める必要があります。納付を怠ると、将来的に年金を受け取れない可能性があるため、注意しましょう。
保険料の納付状況は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で簡単に確認できます。これらを活用して、自分の納付状況を定期的にチェックしましょう。
自営業者は老齢年金が少ない
自営業者は、基本的に国民年金のみを利用することになるため、厚生年金も受け取る会社員や公務員と比べると、老齢年金の受給額が少ない傾向にあります。
その場合、私的年金制度の利用を検討することが重要です。たとえば、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」といった私的年金に加入することで、老後の年金額を増やせます。
公的年金の種類
公的年金には、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類があります。それぞれの年金は、異なる状況で受給するものです。ここでは、それぞれの年金について詳しく見ていきましょう。
老齢年金
老齢年金とは、公的年金の加入者が一定の年齢に達したときに一生涯受け取れる年金のことです。具体的には、国民年金と厚生年金の加入者が対象となります。それぞれの概要は次のとおりです。
老齢基礎年金
- 国民年金に加入している人
- 受給資格期間が10年以上ある
- 65歳から支給される
老齢厚生年金
- 厚生年金に加入している人
- 受給資格が必要
- 65歳から支給される
- 年金額は厚生年金加入時の報酬額や加入期間に応じて計算される
また、前述したように老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給開始年齢は、希望に応じて60歳以後から繰り上げ受給、66歳から70歳までの間で希望する時点から繰り下げ受給することも可能です。
障害年金
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事に制限が生じた場合に受け取れる年金です。障害基礎年金(国民年金)、障害厚生年金(厚生年金)の2つがあり、支給額は障害の程度や配偶者の有無、子どもの人数などによって異なるため、注意しましょう。
障害基礎年金を受け取れる条件は次のとおりです。
- 障害の原因となった、病気やケガの初診日が国民年金加入中にある
- 障害等級が1級または2級である
- 被保険者期間のうち2/3以上の納付済み期間があること
生まれつきの障害や子どものころに障害を負った場合は、20歳から支給されます。
障害厚生年金を受け取れる条件は次のとおりです。
- 厚生年金加入中に初診日がある
- 障害等級が1級から3級である
- 被保険者期間のうち2/3以上の納付済み期間があり、直近1年以内に未納がない
厚生年金に加入している間に初診日があるということは、第2号被保険者としての国民年金加入中に初診日があることとなります。そのため、障害等級1級または2級の場合であれば障害基礎年金も併せて支給されます。
遺族年金
遺族年金は、国民年金・厚生年金の加入者、もしくは被保険者であった人が亡くなった場合に、その人に生計を支えられていた遺族に支払われる年金です。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
遺族基礎年金は、国民年金加入者が亡くなった際、次の条件を満たす子どもがいる場合に、その子ども/その子どもと生計を一にする死亡人の配偶者に支給されます。
子どもの条件
- 18歳未満(18歳に達した年度の3月31日を迎えていない子ども)
- 1級または2級の障害状態にある20歳未満の子ども
この場合、子どもやその子どもと生計を共にしていた配偶者に対して支給されます。
一方の遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなった際に支給されるものです。次のうち、いちばん順位が先の遺族が受け取ります。
(死亡した人の)
1:配偶者・子ども
2:父母
3:孫
4:祖父母
たとえば、亡くなった人に、1:配偶者または子どもがいれば1に支給され、2以下の人には支給されません。配偶者や子どもがいなければ、2の父母が受け取ることになります。
なお、子どもや孫の年齢条件は遺族基礎年金と同様です。また、配偶者のうちの夫、父母、祖父母は、死亡時点で55歳以上である必要があります。
私的年金の種類
私的年金は、個人で積み立てていく年金のことで、公的年金を補完するうえで重要な役割を担います。ここでは、代表的な私的年金の種類について解説します。
企業年金
企業年金は、各企業が従業員の退職後の生活を支えるために独自に導入する年金制度です。企業年金には、確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)の2種類があります。企業が民間の信託会社などと契約して、勤務している従業員が受け取る年金の積立金を管理・運用する仕組みです。
企業年金の内容は企業ごとに異なり、積立金の支払額や年金の受取額も企業によって変わります。そのため、自分が勤務している企業の企業年金制度について詳しく確認しておくことが大切です。
国民年金基金
国民年金基金は、自営業やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が利用できる年金制度です。厚生年金と比べて受給額が少ない国民年金を補完するための制度として、上乗せ部分の年金を受け取れます。
国が運用しており、加入は任意です。もし加入者が亡くなった場合には、遺族一時金などの給付もあります。
掛金は口数制で、受け取る年金額や給付の型を自分で選択することが可能です。さらに、国民年金基金の掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の軽減効果があります。
個人年金保険
個人年金保険は、民間の保険会社が提供する私的年金の一種です。契約者は定められた保険料を一時払いや分割払いで支払い、年金受取年齢に達した際に契約内容に基づいて年金を受け取ります。
個人年金保険の特徴の一つは、年金の支払い開始年齢を任意に設定できる点です。また、年金の受給期間も5年、10年、終身などから選べるため、老後の生活設計に柔軟に対応できます。
なお、個人年金保険の保険料は所得税の計算において生命保険料控除の対象です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人が自ら加入し、掛金を支払うことで将来の年金を積み立てる制度です。この制度では、加入者が自分で金融商品を選び、運用を行います。
60歳以降に運用した年金を一括または分割で受け取れますが、受け取る金額は運用結果により異なる点には注意しましょう。
iDeCoの大きな魅力は、掛金の全額が所得税控除の対象となる点です。また、運用で得た利益はすべて非課税となり、年金を受け取る際にも退職所得控除や公的年金等控除の対象となるため、高い節税効果があります。
年金の仕組みを理解しておこう
日本の年金制度は、公的年金と私的年金からなる3階建て構造となっており、それぞれの役割と特徴を理解することが大切です。公的年金は国民年金と厚生年金からなり、基本的な生活を支える役割を持っています。
私的年金は、自分のライフスタイルや将来の資金計画に応じて選ぶことができる追加の年金制度です。税制上の優遇や一生涯支給されるなどの強みもあり、老後の安定した生活を目指すためにはぜひ活用したいところでしょう。
各年金の種類や特徴を理解し、自分に合った最適な年金プランを選んでください。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長