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お役立ちコラム
2016年10月27日
訪問介護では医療行為はできない?
2016年、日本では介護関連の整備が着々と進められており、超高齢化社会を乗り切るためにさまざまな手段が講じられています。
介護に関する政府の方針のひとつに、住み慣れた街で長く暮らすことを目的とした「地域包括ケアシステム」というものがあります。この方針では、被介護者を老人ホームなどの施設に入所させるのではなく、在宅介護を受けながらこれまでと変わらぬ環境で生活させることを推進しています。この地域包括ケアシステムの影響もあり、将来的には訪問介護のような在宅サービスが日本の主要事業になるとされています。
そんな訪問介護ですが、できることとできないことの線引が難しいという問題点があります。利用者側ができると思っていることでも、訪問介護の事業者側からすればできない行為があるのです。その代表的なものが「医療行為」です。
■訪問介護での医療行為はNG
大前提として、訪問介護をするヘルパーは医療行為を行うことができません。医師に関するさまざまな取決めがされている医師法の17条では、「医師でなければ医業をなしてはならない」という明記があります。これを違反した場合、違反者は2年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。訪問介護のヘルパーは介護に関する知識はあるものの、医療に対する知識はありませんし、研修を受けているわけでもありません。当然ながら医師免許もないため、医業を行うことは違法行為になるのです。
とはいえ、どういった行為が医療行為にあたるのか、その範囲はあまり知られていません。診察や手術といった行為が医療行為であることが明白なのですが、爪切りや薬の服用補助といった日常的な行為も医療行為とみなされていた時代もありました。医療行為の線引が広く認知されていないことが原因で利用者とヘルパーの間で認識に齟齬が生じ、信頼関係に影響が出るケースも多々ありました。
■医療行為の解禁へ
前述したような、利用者とヘルパーの間の認識の齟齬は介護の現場で大きな問題となっていました。これを解消すべく、厚生労働省は2005年に一部の行為を医療行為から除外することを決定しました。この改正で除外された行為は、以下のとおりです。
- 水銀体温計・電子体温計による腋下の体温測定、耳式電子体温計による外耳道での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
- 新生児以外で入院治療の不要な者へのパルスオキシメータ装着
- 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼ交換を含む)
- 軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
- 湿布の貼付
- 点眼薬の点眼
- 一包化された内服薬内服(舌下錠の使用も含む)
- 座薬の挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助
5番目以下の行為に関しては、事前に医師の処方や薬剤師の指導を受け、看護師の指導を遵守した医薬品を使用しなければいけません。このような縛りはいまだにありますが、それでもヘルパーが行うことができる行為の範囲は大きく広がりました。また、これら以外にも爪切りや歯磨き、耳掃除など一部の医療行為の規制も緩和されました。
この2005年の改正を皮切りに、ヘルパーの医療行為に関する環境は大きく変化していきます。2012年には一定の研修を受けたヘルパーは口腔内、鼻腔内、カニューレ内のたん吸引もできるようになりました。今後在宅介護が重視されるということから、ヘルパーが行える医療行為の領域はどんどん変化していくと予測されます。
■何ができて何ができないかは利用者側も知っておくべきこと
ヘルパーが対応できる医療行為の範囲は拡大しているものの、まだまだできない医療行為もあります。お互いの信頼関係を崩さないためにも、何ができて何ができないのかは利用者側も知っておかなければいけません。訪問介護を利用する際には、あらかじめ確認して快適に介護サービスが受けられるようにしましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長