お役立ちコラム

要介護5は、介護保険制度における最も重度の介護状態を示す認定です。ご家族がこの認定を受けた場合、日常生活のほぼすべてにおいて介助が必要となるため、適切な介護サービスの利用が不可欠です。

この記事では、要介護5の状態や認定基準、要介護4との違いについて詳しく解説します。また、要介護5で利用できる介護保険サービスや、実際のケアプランの事例も紹介しますので、参考にしてください。

 

要介護度について

要介護度は、介護保険制度において日常生活でどの程度介護サービスが必要かを示したものです。自立、要支援1から要介護5までの7段階に区分されます。

要介護度は、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間」をもとに認定されます。また、段階によって利用可能なサービスや支給される給付内容が異なるのが特徴です。

要介護5は、この中で最も支援が必要な状態を指し、家族や介護者の負担も大きくなるため、適切なサービスの利用が重要です。

要介護度や要支援と要介護の違いなどについては、次の記事で詳しく紹介しています。そちらもあわせて参考にしてください。

要介護1とは?利用可能なサービスや限度額、要支援2・要介護2との違いを解説
要介護2とは?認定基準や利用できるサービス、他の要介護度との違いを解説
要介護3とはどんな状態?受けられるサービスや限度額、ケアプラン例を紹介
要介護4とは?要介護3・5との違いや利用できるサービス、ケアプラン例を紹介

要介護5の状態とは

要介護5は、介護保険制度で最も重度の介護状態を示す認定です。この状態にある方は、日常生活全般にわたり全面的な介助が必要であり、身体機能の低下や認知症の影響で自力での生活が非常に困難とされます。

ここでは、要介護5の状態や認定基準、要介護5でも在宅介護が可能なのかという点について解説します。

要介護5の状態

要介護5は、要介護認定の中で最も高い区分であり、日常生活のほぼすべてにおいて介護が必要な状態です。自分一人での生活が困難で、多くの場合は寝たきりの状態となり、介護者とのコミュニケーションも難しくなります。

2022年の厚生労働省の調査によると、要介護度5の方の介護が必要となった主な原因は、1位「脳血管疾患(脳卒中)」(26.3%)、2位「認知症」(23.1%)でした。脳血管疾患によって麻痺が残ったり認知症を併発したりして、以前と同じような生活レベルで暮らすことが困難となるケースも多くなっています。

参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」

要介護5の認定基準

要介護5の認定基準は、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間」に基づいて決定されます。この基準時間とは、日常生活において必要な介護サポートに要する時間を示したものです。要介護5に認定されるためには、基準時間が110分以上であること、またはこれに相当する状態であることが求められます。

要介護4との違い

要介護4と要介護5の主な違いは、自己管理能力や日常生活での自立度にあります。要介護4では、自分でできることがわずかにある場合がありますが、要介護5はほとんどの場面において介助が必要です。

要介護5の方は、自力での起き上がりや移動が困難で、ほとんど寝たきりの状態が多く見られます。また、意思疎通が困難なことが多く、日常的なコミュニケーションにも介助が必要です。要介護5の方のほうが、ベッドで過ごす時間が長く、より手厚い介護が求められます。

要介護5の在宅介護は難しく、施設入居も選択肢に

要介護5の方は、1日の多くの時間をベッドの上で過ごすことになるだけでなく、日常生活全般(食事やトイレなど)にも介助が必要です。また、医療ケア(経管栄養や酸素療法など)も必要とするケースが多いため、在宅介護が難しいといえるでしょう。

家族にかかる介護負担も大きくなるため、介護施設への入居を検討することをおすすめします。施設に入居することで専門スタッフによる適切なケアを受けられるため、家族も安心して生活を続けられるでしょう。

要介護5で利用できる介護保険サービス

要介護5の方が利用できる介護保険サービスは多岐にわたります。具体的には、在宅での日常生活をサポートするための訪問介護や通所介護(デイサービス)、短期入所施設での宿泊サービス、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設(老健)といった施設入居サービスなどが利用可能です。

ここでは、要介護5の方が利用できるサービスについて紹介します。

在宅で利用するサービス

自宅で家事の世話や介護を受けるサービスとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問看護
  • 訪問入浴
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

訪問介護(ホームヘルプ)では、家事や身体介護など日常生活のサポートを受けられます。訪問看護は、看護師などの医療関係者が自宅を訪問し健康状態をチェックした上で、主治医の指導のもと必要な医療ケアを行うものです。

そのほかにも、入浴が難しい場合に利用できる訪問入浴サービスや、理学療法士などが自宅でリハビリを提供する訪問リハビリテーションなどがあります。

施設に通って利用するサービス

要介護5の方が施設に通って利用できるサービスには、次のようなサービスがあります。

  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 地域密着型通所介護
  • 療養通所介護
  • 認知症対応型通所介護

通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)では、日中の見守り、食事、入浴、レクリエーション活動などを通じて、心身の機能維持を図ります。

また、地域密着型通所介護や療養通所介護、認知症対応型通所介護など、特定のニーズに応じたサービスも利用可能です。これらのサービスを活用することで、要介護者は自宅での生活を続けながら、定期的に施設に通い、安心して過ごせる環境を整えることができます。

宿泊して利用するサービス

要介護5の方が宿泊して利用するサービスとしては、次のようなものがあります。

  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

これらのサービスは、在宅介護を支える家族や介護者が休息を取るためや、利用者が専門的なケアを受けるために利用されます。ショートステイでは介護施設に短期間滞在し、日常生活の支援や機能訓練を受けられます。医療型ショートステイは、医療的なケアが必要な場合に適した環境が整っているのが特徴です。

訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービス

要介護5の方が訪問・通所・宿泊を組み合わせて受けられるサービスとしては、次のようなものがあります。

  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
  • 小規模多機能型居宅介護

これらのサービスは、利用者の状態や家族の負担を考慮し、柔軟に訪問、通所、宿泊を組み合わせて提供されます。看護小規模多機能型居宅介護では、医療ケアも含めたサービスが受けられ、医療ニーズの高い方にも対応しています。

小規模多機能型居宅介護とは、同一の介護事業者が通所を中心に訪問、宿泊を一体的に提供するものです。1つの事業所と契約すればすべてのサービスを受けられるため、利用者の安心感も高まります。

施設などに入居して利用できるサービス

要介護5の方が施設などに入居して利用できるサービスとしては、次のようなものがあります。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)
  • 介護医療院

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、要介護認定を受けた方が暮らすための生活施設で、日常生活における介護や医師や看護師による健康管理などのサービスが提供されます。また、介護老人保健施設(老健)では、リハビリを重視しており、自立を目指す支援を受けることが可能です。

さらに、有料老人ホームや軽費老人ホームなどの特定施設入居者生活介護では、介護付きの生活空間が提供されます。介護医療院では、医療と介護の複合的な支援が可能です。

地域密着型サービス

要介護5の方が利用できる地域密着型サービスとしては、次のようなものがあります。

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 地域密着型特定施設入所者生活介護

地域密着型サービスは、小規模な施設で提供される介護サービスの一形態です。これらのサービスは、地域に根ざした運営が特徴で、利用者が住み慣れた環境で安心して生活できるようサポートします。

要介護5の支給限度額と助成・給付制度

要介護5では、介護サービスを利用する際の支給限度額が定められています。また、さまざまな給付や助成制度を利用することが可能です。

ここでは、要介護5の方の支給限度額や助成・給付制度について解説します。

支給限度額

要介護5の支給限度額は、月額362,170円です。この範囲内で介護サービスを利用する場合、費用の1割を自己負担(一定以上所得者の場合は2割、または3割)することになります。

たとえば、自己負担が1割の場合、36,217円が自己負担の限度額です。支給限度額を超えてサービスを利用した場合、原則として超過分の費用は全額自己負担となります。

ただし、高額介護サービス費制度で一部払い戻しを受けられる場合があります。詳しくは後述の項目をご確認ください。

給付金・補助金

要介護5の方が利用できる給付金・補助金には、さまざまな制度があります。利用可能な給付金や補助金は次のとおりです。

  • 高額医療・高額介護合算療養費制度
  • 医療費控除
  • 障害者控除
  • 高額介護サービス費制度
  • 移動に関する助成制度
  • 福祉用具の貸与費・購入費の支給
  • 居宅介護住宅改修費

それぞれ詳しく見ていきましょう。

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、1年間(毎年8月1日~翌7月31日)の間に支払った介護保険と医療保険の自己負担額を合算し、一定の限度額を超えた場合に超過分の金額が払い戻される制度です。限度額は、世帯員の年齢構成や所得区分に応じて設定されています。

この制度の利用には申請が必要なため、事前に確認しておきましょう。

医療費控除

医療費控除は、1月から12月までの1年間にかかった医療費が10万円、または総所得金額の5%のどちらか低いほうを超えた際に利用できる所得控除です。医療費控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。

障害者控除

障害者控除は、所得税や住民税などで控除を受けられる制度です。対象者には「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3種類があり、それぞれ控除額が異なります。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度は、1か月間に利用した介護保険サービスの自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。上限額は、世帯に属する65歳以上の方の課税所得額などに応じて異なります。適用を受けるためには、所定の申請手続きが必要です。

移動に関する助成制度

要介護5の方にとって、移動は大きな課題となります。移動に関する助成制度もあるため、有効活用しましょう。ここでは、一例を紹介します。

一部の航空会社では、介護割引運賃制度を提供しており、事前に確認することで割引を受けられる場合があります。また、鉄道会社でも長距離移動用の割引制度が複数存在します。これらの制度を利用する際には、事前の確認が重要です。

さらに、寝たきりの方や車いすを利用している方のために、一部の自治体では介護タクシーの助成制度を設けています。

福祉用具の貸与費・購入費の支給

福祉用具のレンタル費や購入費は、介護保険の適用対象です。自己負担割合に応じて自己負担額は異なります。

<レンタル時に介護保険が適用できる福祉用具>

  • 介護ベッド
  • 車いす
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 移動用リフト(工事を伴わないもの・つり具部分を除く)
  • 自動排泄処理装置(尿のみ吸引するもの)

<購入時に介護保険が適用できる福祉用具>

  • 腰かけ便座
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトの吊り具部分
  • ポータブルトイレ

居宅介護住宅改修費

居宅介護住宅改修費は、要介護状態にある高齢者が自宅で安全かつ快適に生活できるよう、住宅を改修する費用を介護保険が一部負担してくれる制度です。

具体的には、移動用リフトの設置や床を滑らかな素材に変更すること、トイレや浴室の改修などが対象となります。

この制度では、要介護度にかかわらず改修費用の上限額は20万円とされています。たとえば、自己負担が1割の方の場合、改修費用が20万円かかったとすると、保険適用額は18万円、自己負担は2万円です。

要介護5のケアプラン事例

要介護5は、日常的に介護が必要な状態であるため、家族にとっても大きな負担となります。このような状況下で、適切なケアプランを立てることは非常に重要です。ここでは、在宅介護と施設介護の場合のケアプラン事例を紹介します。

在宅介護の場合

在宅介護で利用できるサービスを組み合わせたケアプラン事例と費用目安について紹介します。ケアプラン事例と費用の目安は次の表のとおりです。

ケアプラン事例と費用の目安
サービス名 利用回数/月 月額利用料金
訪問介護(ホームヘルプサービス) 20回 67,800円
訪問看護 8回 46,960円
訪問入浴 4回 57,440円
訪問リハビリテーション 4回 13,280円
通所介護(デイサービス) 8回 93,360円
短期入所生活介護(ショートステイ) 8日 89,600円
福祉用具貸与 定額 24,280円
合計 335,280円
自己負担額 1割負担 33,528円
2割負担 67,056円
3割負担 100,584円

※月額利用料金は:「厚生労働省のシミュレーション」をもとに算出しています。サービスの利用回数を入力するだけで、1か月にかかる介護サービス費用の目安を算出可能です。

施設介護の場合

要介護5の方が施設に入居してサービスを受ける場合の選択肢としては、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設(老健)などがあります。

今回は、特別養護老人ホームでサービスを受ける場合を例に、月額利用料の目安を紹介します。

  • 施設サービス費:31,672円(1割負担の場合)
  • 食費:約4万円
  • 家賃・管理費など:約1.1万~6万円
  • 合計:約6万~15万円(1割負担の場合)

参考:厚生労働省「介護サービス概算料金の試算」

要介護5では介護が常に必要なため介護サービスを利用しよう

要介護5の状態では、日常生活のほぼすべてにおいて介護が必要となり、家族だけでの介護は困難です。介護者が無理をしすぎると、心身ともに疲弊し、共倒れの危険が高まります。そのため、介護サービスの利用を検討し、介護者自身の負担を軽減することが重要です。

あわせて、介護休業制度や介護休暇、レスパイトケアなど、介護者向けの負担軽減策を上手に活用することも求められます。以下に制度や言葉の意味についてまとめましたので、負担軽減にお役立てください。

  • 介護休業:要介護状態にある家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業できる制度
  • 介護休暇:要介護状態にある対象家族が1人の場合、1年間で5日まで(2人以上の場合、1年間で10日まで)、休暇を1日または時間単位で取得できる制度
  • レスパイトケア:リフレッシュや休息を取る介護者のためのケアを指す言葉。介護者の休息や軽減を図るだけでなく、介護者の気分を楽にすることで介護の継続を可能にすることを目的としています。介護を受ける方も他の人からいつもと違うケアを受けることによって、気づきを受けられるなどのメリットもあります。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長